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格安SIM通信無料化に見る「ネットワーク中立性・通信の秘密」

SIMカード

格安SIMの通信料無料化、カウントフリー機能における「ネットワーク中立性」の議論と、「通信の秘密」の問題について解説しています。LINE MOBILEやFREETEL(フリーテル)を例に挙げ、ガイドラインに沿って調査してみました。

格安SIMでSNS (LINE/Twitter/Facebook)やポケモンGO等、個別アプリの通信無料化サービスが提供され始めています。ここで今議論されているのが、カウントフリー機能を実現するにあたって必要な情報を識別する「通信の秘密」問題と、個別サービスを無料化することによる独占的な状態を懸念する「ネットワークの中立性」の議論です。

今後も増えてきそうなカウントフリーに関するこれらの問題をまとめてみようと思います。


格安SIMの通信無料化における「ネットワークの中立性」の議論

日本国内では「LINE MOBILE(ラインモバイル)」が発表され、自社グループ系の国内大手SNSアプリであるLINEや、同じく人気のFacebook、Twitterなどの通信無料化プランを発表しました。FREETEL(フリーテル)DTI SIMは、Niantic社の人気ゲームアプリ「ポケモンGO」の通信利用をカウントフリーにする機能を提供開始しています。

海外に目を向けると、米通信キャリアT-MobileもポケモンGOの通信無料化に踏み切っています。これらを見ても、「プロバイダが特定サービスの通信を無料化する」というのは、一部では最近のトレンドになっているとも言えます。

ユーザーにとっては使用頻度の多いツールがカウントフリーになるのは嬉しいはずなのですが、通信業者がこれを率先して行うと「ネットワークの中立性」という問題も出てきます。

公式サイト:LINEモバイルFREETEL(フリーテル)DTI SIM

ネットワーク中立性とは

ネットワーク中立性」とは、簡単に言うと「すべてのインターネット・トラフィックは、中立・平等に扱われるべきである」という考え方です。通信事業者、つまりプロバイダーによってネットワークを制限したり個別サービスに特別扱いすべきではないという概念です。

では通信事業者の「ネットワークの中立性」に関する議論で、今回の格安SIMにおける「通信無料化」での問題はどこにあるのでしょうか?

特定サービスを無料化する差別的な扱いが議論に

ネットワーク中立性の観点から言えば、「通信業者によって平等に扱われるべきパケット通信」が「特定の人気サービスのみ、通信事業者の判断で無料化されている」部分が議論になっています。こういった人気サービスのみが通信事業者によって優遇されるという点が問題ですし、例えばLINEモバイル+LINE無料化という組み合わせによって、所謂「市場支配性」の高いサービスとなってしまう懸念も一部では指摘されています。

ただし「ユーザーの利便性」という点を考えると、利用者にとっては悪い話ではありません。よく使うアプリの通信がカウントフリーとなり月額料金も安い格安SIMが使えるという事実は、ほとんどのユーザーにとってメリットになるでしょう。

もちろん特定サービスの通信無料化による優遇等は、長期的に見ると独占的な市場となってしまい、成長を阻害するという可能性もあります。この「独占⇄利用者メリット」がせめぎあっている状態というのが、格安SIMのカウントフリー機能における最大の論点と言えます。

帯域制限以外のルールは問題無し?

ネットワーク中立性における日本でのルールは、「ネットワーク混雑に対処する視点からの帯域制御」を対象としており、混雑制御を超えたルールに関しては不確定要素が多いのが実情です。

よってLINE MOBILEのSNS通信無料化、FREETEL SIMのポケモンGO無料化などは、現状ルール上問題ないものと考えているようです。もちろんルールによって対応は変化する可能性もあるので、今後の市場動向はチェックしておく必要があるでしょう。

格安SIMのカウントフリー機能と「通信の秘密」

通信のカウントフリーを実現するために、サービスに関わる通信先などを識別する可能性があります。これらは「通信の秘密」に該当する可能性があり、こちらも議論になっています。

通信の秘密とは

通信の秘密」とは、2015年11月30日に一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA) が公開したガイドライン(第4版)によれば、以下のように定義されています。

「通信の秘密」の範囲には、個別の通信に係る通信内容のほか、個別の通信に係る通信の日時、場所、通信当事者の氏名、住所・居所、電話番号等の当事者の識別符号等これらの事項を知られることによって通信の意味内容を推知されるような事項全てが含まれる。

出典:電気通信事業者におけるサイバー攻撃等への対処と通信の秘密に関するガイドライン(PDF)

上記に該当する通信の内容は、通信の秘密になるという事です。

では「通信の秘密の保護はなぜあるのか?」という部分ですが、以下のように明文化されています。

通信の秘密は、個人の私生活の自由を保護し、個人生活の安寧を保護する(プライバシー保護)とともに、通信が人間の社会生活にとって必要不可欠なコミュニケーションの手段であることから、憲法上の基本的人権の一つとして憲法第 21 条第2項において保護されている。これを受けて、電気通信事業法において、罰則をもって、「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。」ものとして、通信の秘密を保護する規定が定められており(電気通信事業法第4条第1項、同第179条)、電気通信事業法上も、通信の秘密は厳格に保護されている。

出典:電気通信事業者におけるサイバー攻撃等への対処と通信の秘密に関するガイドライン(PDF)

簡単に言うと「個人情報を保護するため」に、通信の秘密の保護が重要になっているという事です。

通信の秘密の「侵害」に当たるケース

ではこれら通信の秘密に関して「侵害とみなされる3類型」はどんな例があるというと、このように記載されています。

一般に、通信の秘密を侵害する行為は、通信当事者以外の第三者による行為を念頭に、
以下の3類型に大別されている。
① 知得:積極的に通信の秘密を知ろうとする意思のもとで知得しようとする行為
② 窃用:発信者又は受信者の意思に反して利用すること
③ 漏えい:他人が知り得る状態に置くこと
ここにいう、知得や窃用には、機械的・自動的に特定の条件に合致する通信を検知し、当該通信を通信当事者の意思に反して利用する場合のように機械的・自動的に処理される仕組みであっても該当し得る

出典:電気通信事業者におけるサイバー攻撃等への対処と通信の秘密に関するガイドライン(PDF)

ここで注目しておきたいのは「機械的・自動的に処理される仕組みでも該当する場合がある」という部分。

当事者の有効な同意がある場合には問題無し?

これらの侵害に該当しない「例外」もあります。

なお、通信当事者の有効な同意がある場合には、通信当事者の意思に反しない利用であるため、通信の秘密の侵害に当たらない。もっとも、次の理由から、原則として契約約款等に基づく事前の包括同意のみでは、一般的に有効な同意と解されていない。
① 約款は当事者の同意が推定可能な事項を定める性質であり、通信の秘密の利益を放棄させる内容はその性質になじまない。
② 事前の包括同意は将来の事実に対する予測に基づくため対象・範囲が不明確となる。

出典:電気通信事業者におけるサイバー攻撃等への対処と通信の秘密に関するガイドライン(PDF)

上記の記述をまとめると、以下のようになります。

  • 通信当事者の有効な同意がある場合:侵害に当たらない
  • 契約約款等に基づく事前の包括同意のみ:有効な同意とは解釈されない

これを現在カウントフリーを提供している「LINE MOBILE」「FREETEL SIM」の2つに当てはめてみます。

LINE MOBILEの場合

LINEモバイルはカウントフリーを実現するにあたって、以下のようなデータを、MVNE保有設備に置いて「タグを機械的、自動的に識別している」とすでに発表しています。

  • IPアドレス
  • ポート番号
  • パケット内容のうちヘッダの1部

カウントフリー機能以外には使われない、また情報も最小限のみ識別するので「通信の秘密」に該当する部分は少ないようにも思いますが、先ほどの「侵害」に関する説明では「機械的・自動的に特定の条件に合致する通信を検知し、当該通信を通信当事者の意思に反して利用する場合のように機械的・自動的に処理される仕組みであっても該当し得る。」という記述があったので、通信の秘密の侵害に該当する可能性も全くないとは言い切れません。

ただしLINEモバイルの場合は、「個別同意をとる」という2段構えです。

  • ×利用規約への包括的同意
  • ◯利用申込時の明確な、個別同意

カウントフリーに関して得られる情報などを「個別に同意」しているのであれば、先ほどの「1)通信当事者の有効な同意がある場合には、通信当事者の意思に反しない利用であるため、通信の秘密の侵害に当たらない」という部分、それから「2)契約約款等に基づく事前の包括同意のみでは、一般的に有効な同意と解されていない」の両方に問題がないサービス内容と言えるかと思います。

LINEモバイルに関してはグループでLINEを提供していることや話題性もあって、この辺りのガイドラインにはかなり慎重になっているのが見て取れますね。

公式サイト:LINEモバイル

FREETEL SIMの場合

FREETEL SIMでもLINEやその他SNSアプリ、ポケモンGOの通信無料化が開始しています。最新のポケモンGOカウントフリーにあたって注意事項に記載されている内容は以下の通りです。

FREETEL SIMを使用した場合、LINE、WhatsApp Messenger、WeChat、AppStore、Pokémon GOで使用した一部の通信料が無料になります。なお、一部の通信料を無料とするために、これらサービスに関わる通信先(送信元IPアドレス、接続先IPアドレス、ポート、HTTPヘッダ、TLSヘッダ)を弊社装置で識別していますが、お客様が実際にやり取りされている通信内容(例えばメッセージの内容、等)については識別していません。また、識別に使用したデータについては当該サービスのみに使用しており、かつ保存もしておりません。

出典:FREETEL SIM

識別している内容に関してはLINEモバイルとほとんど変わらないので、これら情報が「通信の秘密」に該当する可能性として低いという見方もできます。ではLINEモバイルと決定的に違う部分はどこにあるかというと「既存ユーザーも自動で無料化が適用になる」という点です。

先ほど説明したように、機械的・自動で情報を識別していても、包括同意のみでは侵害に当たる可能性もあります。例えばFREETEL SIMが開始した当初に申し込んでいるユーザーなんかは、個別同意などしている可能性は限りなく低いですからね。

ただし既存ユーザーに個別同意をとるのも利便性の面で見ると変な話で、所謂「勝手に」無料化するにしても、ほとんどの場合は利用者にメリットしかないのでは?とも感じます。

「識別しているデータ自体が通信の秘密に該当していない」という可能性もありますし、問い合わせでもそのあたりは弁護士と確認した上で問題ないとの判断で運用しているという回答をいただいています。既存ユーザーへの自動適用は議論すべき部分もありそうですが、FREETEL SIMも法令上やガイドライン上問題ないと判断した上でカウントフリー機能を実装しているのは間違いないでしょう。

ユーザーは単純に通信無料化を喜んで良いのでは

カウントフリー機能における「ネットワークの中立性」と「通信の秘密」についての問題点を挙げてきましたが、よくよく考えて見ると「人気サービスの通信が無料になる」という、ユーザーにはメリットしかない話です。

もちろん通信内容の保護や将来的な市場独占による弊害は議論の余地が残っていますが、現状は「月額料金が安くて、人気サービスの通信がカウントフリー」というお得な格安SIMとして、単純に喜んで良いのではないでしょうか。

格安SIMにおけるカウントフリーの議論まとめ

今回の記事をまとめます。

  • 特定サービスを通信無料化することは「ネットワーク中立性」の部分で議論の余地あり。
  • カウントフリーにおける識別情報は通信の秘密に関わるが、個別同意など対策も取っている
  • 今後の独占支配には懸念があるものの、人気サービスの通信無料化は単純にメリットが大きい

特にLINEモバイルはMVNO新規参入ですが、プランの内容やLINEのバックボーンがあることを考えると、格安SIM市場へのインパクトは非常に大きいものになりそうです。現状カウントフリー機能において懸念されている部分も細心の注意を払っているのが見て取れるので、今後も期待しておきましょう。

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